世界経済が不況になろうと、日本経済が不況になろうと業績があまり大きく下がらない安定したビジネスの会社が保有する株式ポートフォリオにあったら心強いですよね?
一般に「ディフェンシブ銘柄」と呼ばれる銘柄は業績の安定性が高いと言われています。
株価は中長期的には業績に連動しますので、株価の安定性も比較的高い傾向にあります。
市場が大暴落しているときにはディフェンシブ銘柄の株価も下がるかもしれませんが、致命傷を負うことはないでしょう。
ポートフォリオの中に、ディフェンシブ銘柄を組み合わせることで、より安定性の高いポートフォリオを作ることができますよ。
- 対象:より安定性の高い株式ポートフォリオを作りたい投資家
- 得られること:ディフェンシブ銘柄のリストと私がイチオシする銘柄
目次
ディフェンシブ銘柄概要と銘柄候補
ディフェンシブ銘柄とは?
ディフェンシブ銘柄とは、一言でいうと業績が外部環境にあまり左右されずに安定している銘柄です。
外部環境というのは
- 為替の変動
- 世界経済の動向
- 中国経済の動向
- 資源価格
- 短期的な政策の変化
- 世界規模での大規模な感染症の拡大
等です。
ディフェンシブ銘柄と言われているものは基本的には不況に強い内需株が多いです。
例えば、ディフェンシブ銘柄の会社の製品への中国での需要が急激に増えて売り上げが急増するようなことはないですが、逆に中国経済が悪化してもあまり売り上げには影響がない、そんな銘柄です。
不況だろうが、円高だろうが、円安だろうが、世界経済が悪化しようが、中国経済が停滞しようが、資源価格が変動しようが、その会社の製品やサービスを中長期的に利用せざるを得ないような銘柄です。
例としては、
- 鉄道:不況だからといって電車に乗らないなんてことはないですよね
- 電気・ガス:個人の用途としては、不況だろうが何だろうが電気・ガスは利用します。工場での利用は影響があるかもしれません。
- 食品:不況でも毎日の食べ物は買いますよね
- たばこ:良し悪しは別として、不景気になってもたばこを吸う人は吸います。ただ、世界的に禁煙の流れがあるので中長期的には需要が伸びるとは思いませんが。
- 医薬品・医療機器:不況でも病気を治すために医薬品は使わざるを得ません。
- 警備サービス:不況でも警備はしてもらわないといけません。不況だからこそ、警備サービスの需要は増えるかもしれませんよ。
- 道路・プラント・ビル等のメンテナンス:インフラやビルの新規建設は不況による税収の悪化や企業が工場建設を見直す等で影響を受けます。ただ、いったん作ったインフラ・ビル設備のメンテナンスは不況だろうが何だろうが継続的にやる必要がありますよね。
- 通信・IT:感染症拡大局面で通信やITについては猛烈な需要増がありました。
ディフェンシブ銘柄の代表的な業種は以下です。
- 鉄道
- 電気・ガス
- 食品
- たばこ
- 医薬品・医療機器
- 警備サービス
- インフラ・ビルのメンテナンスサービス
- 通信・IT
持続的な事業成長が期待できるディフェンシブ銘柄候補一覧
今回は私がおすすめするディフェンシブ銘柄一覧をまとめてみました。
ディフェンシブ銘柄と言っても投資をする限りは株価は上がってもらわないといけません。
このため持続的に事業成長が期待できるディフェンシブ銘柄という観点で選び直しました。
前回までのリストは不況に対する安全性だけしか考慮していませんでしたが、守りに入った投資は負けます。
業種 | 銘柄 | 時価総額 (百万円) |
---|---|---|
通信 | NTT | 9,498,421 |
鉄道 | JR東日本 | 2,902,899 |
医療機器 | テルモ | 2,616,550 |
医療 | エムスリー | 2,616,179 |
警備 | セコム | 2,085,648 |
医療 | 塩野義製薬 | 1,798,164 |
医療機器 | シスメックス | 1,506,928 |
金融 | 日本取引所 | 1,087,721 |
食品 | 日清食品 | 952,357 |
警備 | ALSOK | 524,486 |
IT | GMOインターネット | 266,121 |
インフラ保守 | ショーボンドホールディングス | 247,976 |
インフラ保守 | ジャパンエレベーターサービスホールディングス | 110,427 |
ディフェンシブ銘柄のリスク
ディフェンシブ銘柄が不況に強いとはいっても、リスクがないわけではありません。
代表的な銘柄のリスクを説明します。
たばこ(JT:日本たばこ産業)
JTは高配当銘柄でもありディフェンシブ銘柄です。
たばこのような中毒性の高いものは不況になったからといって基本的には消費量があまり下がらないと想定されます。
ただ、たばこ産業は規制産業であり政府の政策の影響を強く受けます。
例えば、たばこ増税をすればたばこの価格が高くなり消費が多少落ちるかもしれません。
また、たばこは健康を害するものですから、消費者等からの訴訟リスクは常にあります。
さらに、JTはたばこ売上の65%が海外たばこ事業のため為替の影響を受けます。
円安なら売上は膨らみますが、円高であれば売上は下落します。
不況には基本的に左右されないものの、政府や為替等コントロール不能な要素に左右されるリスクはあります。
また、基本的には中長期的にたばこの需要は減少すると見たほうが良いので、中長期的に本当にリターンを得られるかどうかは慎重に判断する必要があります。
電力・ガス
電力については、原子力発電に関する国及び地方自治体の政策に左右されます。
また、東日本大震災のような状況が起こったとすると破滅的な影響がある可能性があります。
電力・ガスともに燃料を海外から輸入しています。
原油・天然ガスの価格が高騰すればコストアップにつながり収益を悪化します。
円高は電力・ガスには燃料価格の減少という形でプラスに影響します。
原子力発電政策がどうなるかわからないことと、いったん何か事故が起こった場合のインパクトの大きさから、原子力発電を実施している電力会社には慎重になったほうがいいでしょう。
ただ、原子力発電を持っていない電力会社であれば、リスクの度合いはガス会社と同等レベルだと思っています。
例えば、沖縄電力は原子力発電設備を保有していません。
今回のリストには電力・ガスは含めませんでした。
安定はしているのですが、事業成長のシナリオが描けなかったためです。
医薬品
医薬品の主なリスクは
- 新薬開発上のリスク
- 薬価改定により、政策的に売価が下落していくリスク
です・
新規医薬品開発がうまくいかないとき(開発中止等)は株価が暴落するリスクもあります。
医薬品にはもう一つ薬価改定というリスクもあります。薬価改定では値上げということは殆どなく、基本的に値下げの方向に薬価が改定されていきます。
政府としても医療費支出を減らさなければならないので、医療費抑制の観点からも薬価は下がっていく傾向にあります。
極めて新規性の高い新薬は高い値付けが可能としても、ジェネリックなどは薬価改定で価格が下がっていく一方でしょう。
この場合、経営体力の小さい小規模医薬品メーカーの収益へのインパクトは大きいので、医薬品に投資するのであれば規模の大きな体力のある会社に投資すべきだという見方もできます。
ただ、ジェネリック医薬品会社はどれも規模が小さく体力がないというジレンマに陥ります。
医薬品については非常に専門性が高く、また政策上のインパクトが大きいためリスクの判断が素人ではとても難しいです。
今回は塩野義製薬だけを入れました。
塩野義製薬は莫大なHIVロイヤリティ収入があり、新薬開発上のリスクを考慮しても安定していると言えるからです。
2020年にイチオシのディフェンシブ銘柄
2020年は今年以上に世界経済、日本経済の見通しがよくわかりません。
原油価格は今大きく下落していますが上昇してしまうかもしれません。
為替は大きく円高に振れるかもしれません。
ディフェンシブ銘柄であっても2020年は今まで以上に慎重に選ぶ必要があるでしょう。
理想を言えば、
- 円高に強い
- 世界経済の影響を受けない
- 日本経済の影響を受けない
- 原油・天然ガス高の影響を受けない
- 資源高の影響を受けない
- 日本政府の国策が業績を後押しする
- 大規模な感染症拡大の影響を受けない
こういったディフェンシブ銘柄です。
今回最初に挙げたディフェンシブ銘柄はどれも不況に相当強い銘柄ですが、その中でも私が現在もっとも強いと考えるのがショーボンドホールディングスです。
ショーボンドホールディングスは、ホームページによると
ショーボンドグループは橋梁をはじめとする社会インフラの補修・補強に特化した専門会社です。
おすすめポイントは
- 国内事業しかやっていないので世界経済や為替の影響は受けない
- 資源高の影響も軽微
- 日本の国内インフラ(道路、鉄橋等)の改修工事はこれから確実に必要でかつ需要は増えていく。高度成長期に作ったインフラが老朽化し、確実にメンテナンスが必要。
- 日本政府も老朽化した社会インフラの対策は重要課題と認識して、メンテナンスに向けた政策を実行している。つまり、社会インフラのメンテナンスは国策。(参考:国土交通省「インフラメンテナンス情報」)
です。ショーボンドホールディングスについては業績が悪化する要素が見当たりません。
まとめ
今回は先の見にくい2020年に向けてディフェンシブ銘柄を検討し、まとめてみました。
いま世界は感染症の感染拡大という未曾有の危機的状況に晒されていますが、その中でも力強くビジネスを成長させることができる銘柄です。
なお、ディフェンシブ銘柄で不況に比較的強いといっても、株式市場が全面安になるときは株価は下がるには下がります。
時に株式市場では受給が大きく崩れて株価が暴落することもあるためです。
銘柄分散、時間分散の原則を徹底しつつ、ディフェンシブ銘柄の投資を検討してみましょう。